mikeigoのブログ

世界の関係性を総体として捉える。解像度高く、クリアーな思考を目指して、備忘録。

不動産市場の「悪い均衡」

要点

  1. 日本の不動産=経年減価率が高い
  2. 耐震技術の高度化=修繕コスト↑→逆選択
  3. 品質・信用のシグナリングが必要→ブロックチェーン相性良い

 

何が起きているか?

日本は住宅を使い捨てにしている(建て替え頻度が高い!)

Fact

・日本の戸建の平均経年減価率=5.8%@東京,6.7%@東京以外

・米国は1.8%

・95%が失われるのに、日本は4,50年、米国は165年

  ※住宅の取引価格、寿命(取り壊しの年数)から推計可能

・「飲食・店舗」「旅館・ホテル」は、より減価率が高い。

 

 

 

なぜそうなのか?

通説(神話)

  1. 日本は木造、欧米は石やレンガ←米国の住宅もほとんどが木造。でも減価率低い
  2. 高温多湿で物理的寿命が短い←東京大阪=65%,アトランタ,ニューオリンズ,ヒューストンは70%
  3. 法定耐用年数が22年だから引っ張られる。←米国も27.5年と大差なし。

 

吉田氏の考察

  1. 生活様式の変化
  2. 耐震技術の進歩(と費用)

1.70年間で建物に対するニーズ(機能・規模)が変化。→既存不動産の利用価値が減少

メモ

戦後の変化は欧米化が主。それなのに、欧米と性向に差が生まれるのはなぜ、?既存不動産を建て替え需要が、一時的に増えたということだろうか。(←短期的問題として捉えている。)

 

2.耐震技術が高度化し、建て替え増加と逆選択をもたらした。

・10~20年に一度、耐震基準が改正→「既存不適合」になる

 =改修需要が、建て替え需要に変化!(費用かかるため、ついでに建て替える)

・一方で、改築時の耐震規制強化=放置して使い続けるインセンティブ

 

後者がまずい。

不動産市場が、「悪い均衡」に陥った

消費者;中古住宅市場を避けるor修繕費を織り込み、値引いて購入

所有者;高値で売れないから、維持管理をしない

【中古市場の問題】

期待される再販売価格の低下=維持管理のインセンティブ↓=逆選択が加速

 

 

どうすればいいのか?

 

売り手が、「品質」に関して信頼できるシグナルを出すことが必要。

 

1.調査の標準化

米国;有資格者が調査(カビ、害虫、電気、空調、上下水、土壌、基礎、屋根、法規制など)

2.過去の維持管理、修繕記録の徹底

ブロックチェーンと相性good

ドバイ国土省;不動産登記にブロックチェーンを利用

 

今は、改築するか否か100 or 0の状態。

0~100の間で連続的に改修の程度を定め、品質が価格に反映されるようにする。

 

 

 

まとめ

日本の不動産市場は特異である。建て替えが多く、不動産の寿命が短いのだ。生活様式の変容によってニーズが多様化したことも建て替え増加の理由の一つだが、より根深い背景は中古市場のデッドロックだ。耐震基準の強化で改修コストが増加し、修繕より建て替えが誘発されている。加えて、所有者がメンテナンスを諦める心理的誘導にもなり、中古市場が玉石混合かつ情報が不透明な常態である。解決するには、品質保証と維持管理の透明化が有効だ。ブロックチェーンとの相性が良く、耐震化と品質向上が進み、市場の流動性が高まるだろう。

 

思ったこと

・所有者が改修したり、耐震対応するのは、結構大変。住民の合意をとったり、資金を平等に収集したり。→面倒臭さを代行してくれるサービスは、ニーズがありそう。

ex. スマホ上で、築年数や建物構造について入力→自動でちょうどいい改修プランをアレンジ→なんらかの合意形成のサポート

 

・「飲食・店舗」「旅館・ホテル」の減価率が特に高い。これは、消費者が飽きやすいことも理由でなかろうか。日本の飲食店はブームが多く、コロコロ趣向が変わってスクラップアンドビルドしている印象がある。欧州は、老舗の店構えでどっしり腰を据えている印象がある。(特にホテルとか)イメージだけど、衣食住に対する消費者の趣向が多様かつ変化に富むのが日本で、逆に欧州の消費者は衣食住に求めるバリューが一定的な感じがする。

 

メモ

日経新聞、2018/10/29、吉田二郎、13面経済教室「日本の住宅市場の特異性」